「逃げ切り計算機」では逃げ切るのが難しい理由とは?
- 2019.05.23
- 投資哲学

SOSEKIです。
ここ数日、また逃げ切り計算機がブームになっています。
逃げ切り計算機はアーリーリタイア時期を検討するに有用 https://t.co/oXUBEY2HcP
— 猫村ねここ@セミリタイア目標! (@semi_retire01) 2019年5月19日
逃げ切り計算機はアーリーリタイア時期を検討するに有用 https://t.co/oXUBEY2HcP
— 猫村ねここ@セミリタイア目標! (@semi_retire01) 2019年5月19日
逃げ切り計算機でセミリタイアのシミュレーションをしてみた https://t.co/t8VM3lnCw2
— あさげ (@asagein) 2019年3月19日
逃げ切り計算機自体には問題はないのですが、逃げ切り計算機を使えば、本当に逃げ切ることができるのかどうか、というか正しく逃げ切り計算機を使えているかどうかについては、考える余地がありそうです。今回は、逃げ切り計算機の罠について解説します。
逃げ切り計算機とはいったい何か?
まず、そもそも、逃げ切り計算機とは何か紹介しましょう。逃げ切り計算機の説明には、以下のように書かれています。
今ある貯金だけで生き延びていこうとした場合、貯金が何歳まで保つかを試算します。
シンプルですね。9つの項目をサイトで入力することで、貯金が何歳まで保つかの試算がなされます。
- 現在の年齢
- 現在の貯金額
- 年間リターン
- 年金支給開始までの年間支出額
- 年金受給開始後からの年間支出額
- 年金受給開始年齢
- 受給年金の月額
- 年間インフレ率
- 受給年金のインフレ連動
こういったシミュレーションをすることに何ら問題はありませんし、そして、投資のモチベーションにつながるので、どんどんやった方がいいと思っています。しかし、反面、大きな落とし穴があるなあと思いました。
逃げ切り計算機をに潜む罠とは?
逃げ切り計算機には、どういう罠が非村営るのでしょうか。それは、年間リターンと、年間インフレ率になります。
この逃げ切り計算機を使っている多くの人は投資家です。そのため、年間リターンは、3~5%で設定されている人が多いようです。一方、年間インフレは、0~2%で計算している方が多いようです。確かに過去20年の日本のインフレ率と、米国株のリターンをあわせると、これくらいの数字で設定しておけば、まあ堅いところと言えるでしょう。
しかし、本当にこのリターン、インフレ率が続くのか、そこには疑問を持つべきだと考えます。
インフレとリターンの関係とは?
基本的には、株価とインフレというのは強く密接しています。基本的に、景気がいい時は、株価もインフレ率も上がる傾向がありますし、景気が悪い時は、株価もインフレ率も下がる傾向があります。
ではここで、1970年からのS&P500と米国の消費者物価指数を見てみましょう。以下のようなグラフになります。
(出所:Online Data Robert Shiller)
もちろん、軸が違うため、一概に比較はできませんが、消費者部下指数が直線的な増加を見せるのに足し、S&P500は直近強い上昇を見せているものお、たとえば1999年から2010年まではほとんど伸びていない状態にあります。
一方、インフレ調整後の実質リターンを見てみましょう。
こちらを見ても、やはり1999年~2010年はほとんどリターンを生み出していないことがわかります。また、1960年~1980年の20年間も、米国のリターンは悪く、他国を劣後していました。
一方、日本のインフレ率を見てみましょう。
このように、現在は0%前後を行ったり来たりですが、かつては年間5%を超えていた時代もあったのです。さすがに高度経済成長期ほどは伸びることは考えづらいですが、今後、インフレになる可能性というのはおおいにあります。(安倍政権も2%のインフレターゲティングをしています。)
リターンは常に一定ではない
また、もう1つ考えておかなければいけないのが、「リターンは常に一定ではない、ということです。」
たとえば、1億円持ってリタイアしたとしましょう。そして、仮に年間の支出が500万円、平均リターンが5%だとします。
このうち、以下の3パターンのような動きをしたとしましょう。いずれもだいたい平均リターンが5%になるように設定されています。)
スタート | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | 7年目 | 8年目 | 9年目 | 10年目 | |
A | 5% | 5% | 5% | 5% | 5% | 5% | 5% | 5% | 5% | 5% | 5% |
B | -20% | -20% | -10% | -3% | 10% | 10% | 10% | 30% | 30% | 30% | 30% |
C | 30% | 30% | 30% | 10% | 5% | 0% | 0% | 0% | -20% | -20% | -10% |
では、それぞれのリターンの場合、毎月500万円使うと、10年後の資産はどうなっているのでしょうか。以下のようなグラフになります。
Aはもちろんフラットです。しかし、Bは約半分になってしまいました。Cはプラス20%程度になっています。このように、たまたまリタイアした年に大きくマイナスが出てしまうと、リカバリーするのが難しくなるのです。
リタイアするときはある程度の余裕を持って
現在の低インフレがいつまで続くか、そして米株のアウトパフォームがいつまで続くかわかりませんし、2018年12月のような調整もよく起こりえます。
リタイア後の生活をシミュレーションするのは悪いことではありません。しかし、投資する以上、リスクがつきまとうことは理解し、余裕を持ってリタイアすることをお勧めします。
それではごきげんよう。
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